キャラクター

「あっ」とつぶやいて急に立ち止まった。
「どうした?」
と尋ねる僕にはこたえず、
何かを探すようにあたりを見回して
それから「あれ?」と言った。
「気のせいかな」
「何が?」
「今、一瞬だけ、花の香りがした。けっこう強いやつ。で、一瞬だけで、すぐ消えたの」

博士部屋の中は相変わらずがらんとしていて、
物が置いてあるのも机の周りだけだった。
冷蔵庫とコーヒーメーカーが低く唸っている以外は
何の音も聞こえてこない。隣の部屋からも。
「ちょうどこの間、修論も卒論も発表が終わってね。今は誰も来てないのよ」
差し出されたコーヒーカップを、「あ、ありがとうございます」と受け取る。
「で、やっぱりこれ以上、私からは言わない方がいいな。君が自分で解かないと。
ていうか私に話しちゃった時点で減点」

彼はペットボトルのジンジャーエールを一口飲むと蓋をし、
上下さかさまにしてテーブルに置きうまくバランスをとらせた。
「何やってんの?」
 僕が尋ねると、
「いや、こうすると炭酸が抜けないんだ」
 とこたえた。いつものように、本当なのかどうかわからない。
天井に、さっきまでは無かったきらめく小さな光がぽつんと映っていて、
食堂の中のどこからか反射しているのだろうと思った。

「農学部の方は最近行ってないな。以前はあのあたりをよく散歩してたが。
そういやそのころ、植物園がつぶれるかもしれんとかいう噂を聞いたが、
今はどうなんだ? まだあるのか?」
「あ、はい、それは、ありますけど、いろいろもめてはいるらしいです。
詳しくは知らないんですが。あんまり関係ない学科なんで」
 僕がそう言うと、ん、と彼女は眼を動かした。
「学科はどこなんだ?」
「農業土木です」
「ああ、けっこう工学よりのとこだろう。農学部の中じゃ」
「あ、はい」
うなずいたところで、女の子は唐突に口をぽかんと開け「そっか」とつぶやいた。

 

ゲーム画面

 

ダウンロード

対応機種:Windows PC

 

スタッフ

企画・シナリオ・スクリプト 山科 誠
グラフィック NnP (特殊装甲隊※当時

素材提供

楽曲
順不同
WindSphere
闇詠乃 功良の『つまらない曲だけど』
写真
順不同


※現在閉鎖
※画像・文章は全て開発中だった頃のものです。